ショートレポート:復権するあのエンジン

車両の電動化が進むに当たり、エンジンの新規開発も考え方が変わりつつあります。

今までは、作りたい車両に対してどのようなエンジンが最適か?というのが求められてきました。

今後は電動化という選択肢が増えたことにより、「いかに開発費を抑えて出したい出力特性を具現化できるか」というのが、これまで以上に求められてきます。

 

そんな中、有るエンジンの形がイマ注目を浴びています。

 

 

古くて新しいエンジン

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/15/040300105/040300006/

それは直列6気筒

今このエンジンが復活するのではないかと言われています(日経オートモーティブテクノロジー 2017年5月号より)。

もともとトヨタや日産など、多くのメーカーが高出力エンジンには直6を採用していました。それがスペース効率や重量配分などの観点から、V6に置き換わってきていたのです。現在でも直6をまともに開発していたのは、BMWくらいでした。

 

BMWの開発思想

BMWが直列6気筒を生産するに辺り、近年「モジュラーエンジン」という考え方を根底に持っています。

エンジンをモジュールとして考え、すべてのエンジンの部品をできるだけ共通化し、コストを下げようという思想です。

その一つが、1気筒500ccという考え方。つまり、

  • 小型車:3気筒1500cc …ミニなど
  • 中型車:4気筒2000cc …1~3シリーズなど
  • 大型車:6気筒3000cc …3~6シリーズ, Mシリーズなど

と言うかたちで、棲み分け・作り分けを行う。

V6やV8は腰下のクランクケースや、シリンダーブロックも新造しなければならず、コストが非常に高く付きます。

このため、直列多気筒にしていく考え方は極めて合理的。4気筒をベースに、シリンダーを増やしたり伸ばしたりすれば、原理的に複数種類のエンジンを作れるのです。

もちろん3気筒の振動や、6気筒の高回転の両方に耐えうる部品とするには、適切な寸法公差やシビアな素材選定が必要になります。ただ最適解を導き出したら、あとは作れば作るだけコストメリットが出ます。BMWはそちらに掛けたんです。

 

加えて、今までは馬力やトルクを排気量で調整するという考え方が主流でした。ですがダウンサイジングが広まったことと、過給や電動化によるパワーのアドオンができるようになりました。これは画期的なことで、状況がガラリと変わりつつあります。

 

エンジンの基本骨格は据え置き。それに使われ勝手を加味して、加給や電動化を使い分けて商品価値を上げる手法が、今後増えてくると思います。

例えば、中型車に関してはターボやスーパーチャージャーで加給し、ダウンサイジングや高出力を確保。小型車においては、48V化によるマイルドハイブリッドとして、モーター機能付き発電機を併用することで、クリーンにパワーを上げCO2排出も削減していく。

今後はこのような流れが加速していくと思われます。

 

BMWにダイムラーも追従

現時点で明確に直6復活を進めているのは、先に述べたBMWとダイムラーです。

ダイムラーは、V8⇒直6へのダウンサイジングを進めています。プレミアムブランドである同社において、直列6気筒というエンジン型式自体、ブランドイメージとの親和性は非常に高いです。

 

その際、ガソリンとディーゼルのエンジンを限りなく部品共用化して、コストメリットを出そうという狙いも見えてきます。

欧州ではディーゼルがエコカーとしての重要な立ち位置に有ったのですが、先日のVWによるディーゼル不正問題の煽りを受けて市場が縮小気味。

加えてダイムラー自身も不正が疑われており(参考記事)、ディーゼルに関しては極力お金をかけたくないという本音が見え隠れします。共用化というのは、市場縮小に対する保険なのかもしれません。

 

 

日本車の動向

ドイツの2大メーカーは、モジュラーエンジンと言う考え方で今後の局面を乗り切ろうとしています。

日本車についての動向は、下記の表にまとめました。

 

トヨタ 高熱効率 コモンアーキテクチャー TNGA
ホンダ 低燃費・ハイパワー 直噴・ターボ ダウンサイジング
日産 高圧縮・ハイパワー 可変圧縮比 VC-T
マツダ 高圧縮比 直噴・NA スカイアクティブ
HCCI

(日経オートモーティブテクノロジーより抜粋、一部筆者追記)

 

トヨタはTNGAのアーキテクチャー思想に基づき、先日販売されたカムリに搭載した新型エンジン(公式HPの紹介)をどんどん展開していく予定です。

簡単に言うと、空気をたくさん入れて早く燃やすという、タンブル流れ強化による高速燃焼で燃費と環境性能を上げていこうという考え方です。これを全車種に適応し、高速燃焼を実現しようというのがトヨタのエンジン戦略です。いわば燃焼の共通化です。

 

ホンダは、4気筒を軸にして直噴化・ターボ加給を実施してハイパワーにしようというダウンサイジング戦略。非常にシンプルですが効果的な手法。

日産は可変圧縮比エンジンという極めてハイメカニックな手法で、環境とパワーの両立をしようとしています(参考)。2018年前後に発売される、QX50:スカイラインクロスオーバーに搭載されるとか。どのようなエンジンになるか見ものです。

 

マツダはスカイアクティブの「高圧縮ガソリン」の考え方を今後も推し進めていくと思います。実はトヨタがやろうとしている、高速燃焼技術に関してはマツダが先を行っています。ハイブリッド技術で両社が提携した際に、技術展開が有ったのかもしれません。

また先日マツダが2018年にHCCI(予混合圧縮自己着火)技術を初めて実用化したエンジンを搭載する(参考)という発表がありました。これまた燃焼のセオリーに真っ向から立ち向かう、非常に技術難易度が高い手法で、F1くらいでしか実用化されていません(ホンダもこれに対応できず大苦戦中)。マツダ研究者の方々が、こだわり抜いて作っているんでしょう。

 

気筒数は・・・

基本的に4気筒が軸になると思います。

あと小型車に3気筒が乗るかもしれませんね。日本は軽自動車も持っているので、そちらとの共通化という考え方も重要。多気筒化には余り向いていないという状況にあるかと感じてます。

冒頭に述べた6気筒化に関しては、トヨタがひょっとしたら実現するかも・・・というレベルですね。

ランクルみたいな大型車両に載せたり、レクサスや復活の噂があるスポーツカーに搭載する、というシナリオが残っているかもしれません。

 

 

 

 

まとめ

「新型カムリエンジン」の画像検索結果

世界的に電動化がゴリゴリ進んでいくことはもはや間違いない事なのですが、まだまだエンジンが自動車技術として重要なのは変わりありません。

むしろ電動化全盛期にむけてできるだけロングスパンで商品性を維持するべく、各メーカーがやれる「最高の一手」をこの数年でぶつけてくる気がします。

最後のあがきになるかどうかは不明ですが、この数年、面白くなってくるかもしれません。

 

 

以上です。

 

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