
2022年の段階で、世界中で電動化が推進されることをこれまでの記事で書きました。
国内ではHEVが大本命。そして海外でも電動化が進み、48V化によるマイルドハイブリッドからEVと言った車両が増えてくるであろうと予測しました。ただしばらくはエンジン主役という構図が急に変わることはないでしょう。現状考えられる、機能・パッケージング・効率を考えたエンジンをぶつけてくることも考えられます。
100年に一度の変革期なんて事も言われていますが、業界紙の煽り文句なだけではなく、実際問題として大きな変化・選択を迫られている状況であることは間違いありません。
2022年という時点を目標とした時、業界の構図はどうなっているか、もう少し踏み込むと、何を売ってお金を稼いでいるのだろうか。
そういった視点で今回レポートを書いてみたいと思います。
世界の販売動向
まず知っておいてほしいのが、今後の車の販売予測です。

https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1703/06/news017.html
数字がないので読みづらいかと思いますが、日本2014年を境にどんどん販売台数が減少しています。他の国は増えてるんです。
そして日本はデータの有る2016年の段階で、新車販売が500万台を割り込みました(自販連HP)。コレは結構衝撃的な数字です。
理由はいろいろあって、一番は日本だけGDPが伸びていない、経済面だけ見ると相対的に貧乏になっているという点が大きいと考えています。それに付随して、若年層の趣味の多様化による車にかけるコストが下がっていったり、ミニバンとHEV一辺倒で、各世代が欲しがる車を供給できていないこととか、色んな原因が有るかと思います。
ここでは理由はあまり深掘りしませんが、結果としてこういう状況が横たわっていることを頭の片隅に入れておいて下さい(この資料に野村総研の詳細分析が有ります)。
で、海外に目を向けると、自動車販売自体は伸びていくことが予想されています。
特に中国とアメリカの伸びがすごいです。あと東南アジアを中心とするASEAN・インドも徐々に伸びています。
中国

中国は色々言われているものの、市場に金は回っています。偏りは有るけれどね。
資産が1億円以上有る富裕層は日本の人口と同じか、それ以上います。爆買いに象徴されるようにこいつらの購買力たるやとんでもないレベルで、中国では高級車が売れまくっているんです。
特にSUVが大人気。ブームの走りになったのが日本とアメリカで、爆発させたのが中国です。まだまだ道路環境は日本ほど良くない中国で、SUVの走破性は日常で発揮される必要な機能。そして高級感と、車体の大きさが中国人の琴線に響くようです。

世界中の自動車メーカーがこぞってSUV市場に参戦し、今やベントレーやランボルギーニまでSUVを発表するに至りました。この流れは暫く続くと思います。
あと現時点で国が環境政策に積極的なので、EVが普及する可能性も高いです。ぶっちゃけ言って法規制が日本や海外に比べてゆるい部分が多いので、大規模な市場実験ができる国として考えている側面も有るとおもいます。日本やアメリカ向け販売に耐えうる仕様で作って、不具合を摘み取ってから、日本に販売するとか。
アメリカ

あとアメリカまだ伸びそうなんですよね。原油が安く安定していることと、なんだかんだ言って借金して物買う国民性は全然変わっていないので、魅力的な新型車が出てきたら買う人も多いのでしょう、
この国はテスラが居るので、EVがガンガン伸びそうな国の一つでもあります。ガソリンバカ食いする車が好きな一面も持ちつつ、西海岸とかでは環境環境と口うるさい人達がいっぱいいるという、まこと不思議な国です。テスラに関しては、「復活するアメリカの製造業」という米国人の心を揺さぶるポイントも持っているようです。
東南アジア・インド

東南アジアはまだまだバイクなどが多いのですが、ものすごく力をつけている国々です。インドも凄い。
自動車市場が爆発するのも時間の問題だと言われています。
ベトナムで人口9000万人、タイで6800万人です(出典)。この2国で日本の人口超えてます。インドは人口10億人超えてますしね。そして平均年齢が30歳前後という若さ。日本は43歳です。
それからタイと日本の貨幣価値の差は、1/4~1/3位と言われています(あんま参考にならんけど体験談的な記事)。これって10年位前は1/10程度と言われていたので、10年で実質的な貨幣価値が倍以上になったことを意味します。
若くて勢いがあるこの国々において、今後車を売っていこうと考えるのは自然な流れです。日産が三菱を買収したのも、三菱が東南アジア圏でブランド力を持っていることも大きいと言われています。
市場の勢いの差がすごい
はい、ここまで書きましたが、売れそうな国に車を売っていくというのは自然な流れ。
逆に売れなそうな国はどうなるかというと・・・。
その国に特化した専売車輌がどんどん減っていく。ということを意味します。
実際現段階でもこの流れは進行していて、ミニバンと軽自動車以外はほぼ世界戦略車です。
コンパクトカーは世界中で売られ、コンパクトセダンはアジア圏の主力商品。SUVは中国・北米で販売して日本では売っていない車も多く、ラージセダンは日本国内での取り回しを考えると大きすぎるような車両が増えています。
2022年に向けて、この流れは加速する一方なのでしょう。
今後自動車会社は、今まで以上に海外でお金を稼ぐ方にベクトルが向くと思います。日本国内で売れ線の車以外を買うとなったら、「世界戦略車をどのくらい日本向けにチューニングしてくれるのか」という点に注目するほかなくなってきていますね。
新車が売れない収益モデルからの変容
新車が売れないと工場が遊んでしまい、大量生産のスケールメリットが活かせません。

https://textream.yahoo.co.jp/message/1007267/kdced5bb8a69a96h/2/82 ちょっと古いです。
ここ数年で色んなメーカーが提携・グループ化、連立をしているのは、まさにこの販売縮小に対応できるような企業生き残り策です。
一人では太刀打ち出来ないけれど、みんなで集まって、それぞれの得意分野を活かせるように作業分担して、工場稼働も分担させる。
安く作るのが得意なメーカー、新製品開発に注力するメーカー、尖った製品を作るのが得意なメーカー。それぞれに分担させ、OEMしたり技術の横展開を広げていく。こうすれば、スケールメリットをなんとか保ちつつ活動ができます。
コレが、売れない時期に「効率的に新車を売る」モデルの一つです。
収益の模索
あとは、もう売れない前提で収益構造を変えてしまうというやり方。コレもメーカーが本気で動き出しています。
現段階でも車が売れないので、
- 定期メンテナンス
- ローンの手数料
- 保険の代行
コレで収益化しようとディーラーは必死です。ローンの審査もかなり甘くなっているとか。
また先日、ガソリンスタンドで不要な整備や用品を売りつけられたというクレームが急増しているとの記事が出ています。最近燃費が良い車が多くなったことによる、ガソリン販売量の低下の影響だと思います。

またガリバーがノレルという、月額制の車のシェアリングサービスをベータ版で開始しました。
その前は、自分の車をレンタカーとして貸し出すことができる、エニカというサービスも始まっています。
若い人を中心に、自動車保険を1日だけ適用する格安プランも人気を博していると聞きます(参考)。
2022年には今よりも車が売れにくくなっているでしょうから、日本でも驚くようなサービスが広まっているであろうことは、想像に難くありません。
シェアリングに対応する
海外では、既にウーバーなどのライドシェアが人気を博している、というレベルでは済まされないくらい広まっているんですが、メーカーも追いつこうと必死。
これは世界的な流れになっていて、GMもカーシェアリングサービスを開始しました(参考)。BMWも実施し、ダイムラーも検討中とのこと。

またフォードが2021年に完全自動運転車(レベル4)の販売を明言しており(参考)、アルゴAIという人工知能開発のベンチャーに1100億円超を投資しました。他にもセンサーメーカーなどにも投資を進めています。
注目すべきは、この自動運転車両を「配車サービス向け」に開発するということ(参考)。
新車が今までのようなペースで売れなくなったとしても、収益を出せるようなやり方をメーカーが模索しだしたことが明確になりました。

デンソーの研究で、日本で完全カーシェアリングが進めば、今の車の1/200で済むという衝撃的な研究結果も出ています(参考)。
ここまで来ると、車が売れないではなく、要らないになります。
だったら、先手を打って完成度の高い自動運転車両を開発して、市場を席巻してしまおうというのがフォードの考え方ですね。提携したシェアリング企業は、だいたい5年毎のモデルチェンジで同じ車買ってくれるでしょうし、先に囲い込んでおけば、外乱のリスクから回避されます。
現状のユーザーのニーズに合わせて、何を求めているかをしっかり考え、それに対応するきめ細やかなサービスを提供する準備をして、利益を増やそうという必死さを感じました。
IoTを収益に

https://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/event/15/121500094/011100065/
また今後は、車がコネクテッドカーになるのは間違いありません。コレも収益のひとつになるでしょう。
簡単に言うと、常にインターネットの無線Wifiにつながっている状態になり、様々なサービスを受けたり、必要に応じてソフトをアップデートしたりできる車です。
今の4Gを超える5Gが現実味を帯びていますので、それを使った大容量のデータ通信が行われます。

その際、ユーザーの走行データをゴリゴリ収集します。アカウントに紐つけて、どこをどのくらい走るかとか、どのような店に立ち寄るとか。それに応じた情報を、カーナビのディスプレイや登録ユーザーのスマホに表示させるんですね。いわば広告収入ですわ。
あと車内には絶対マイクが必要になるので、会話も抜かれるかもしれません。今のスマホもやってるらしいですけど(公式にはゼッタイ認めないけど)。
カーシェアリングを安くするから利用してね、でも広告入れるよ。嫌な人は車買ってね。
ユーザーはそういう選択を迫られる日が来るかもしれません。
そして、メーカーとしては新車売るより、そういった外部収入のほうが効率的に儲かるなんて日が来るのも、ひょっとしたら時間の問題なのかもしれません。
まとめ
かなり長くなりましたが、レポートを書かせて頂きました。
しばらくは世界的に自動車需要が増えるとの予測が有りますので、連立したり協力しながら、世界にむけて車が売られていくと考えます。ですが2022年に近づくに連れて、シェアリングサービスはどんどん広まってくると思います。それに対応した収益構造の改革は、間違いなく入ってくるでしょう。自動運転車両を積極的に開発して、先に覇権を握ってしまおうという狙いを明確にしたメーカーも出てきました。
現在は、
- ガソリン車両の延命
- 電動化
- 自動化
- シェアリングサービスの展開
これらが複雑に入り混じっていて、今後どうなるかが非常に読みにくいです。
ただこの内2~4について、方向性として進んでいくことは間違いありません。多分望んでいるユーザーが多い、という統計が出ているんでしょう。このBLOGの読者さんたちは違うかもしれないけれど。
途中で技術的課題やユーザーの意識の変化など、様々な課題が出てくると思います。それらをうまくクリアしながら、ユーザーに新しい価値を提供すべく、自動車関連企業は必死に活動を続けていくと思います。
以上になります。
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