日産・ラシーン パルサーの四駆をベースに作った、今で言うクロスオーバーSUV。ドラえもんとのコラボCMが有名。90年台とは思えない角ばったルックスに惹かれたファンが多い。贅沢な専用品のオンパレードで、90年代の豊かさを伺い知れる一台 pic.twitter.com/xKoKTpUK88
— 偏見で車を語るbot (@henken_car) 2017年4月9日
追加の偏見
サニー・パルサーをベースにし、全車FFベースの4WDにしたコンパクトカー。そのボクシーかつ可愛らしいデザインに惹かれ、現在に至るまで老若男女のファンが多い車です。
2018年現在でも関西圏を中心に専門店が並び、ゆるキャン△などのアニメにも登場したことから、新たなファンを広げつつあります。

外観のルックスも素晴らしいですが、内装もまたソリッドながらとても魅力的な造形でして、シンプルながらも非常に整理された飽きの来ない作りになっています。
中の人もラシーンに魅力を感じ、現在進行系で4年ほど乗っております。後期型のサンドベージュカラーです。
オーナーということも有って、ラシーンについてはそこそこ調べさせてもらっているので、あまり長くなりすぎない程度に車両紹介をしたいと思います。
生産台数と、多彩な仕様とグレード

ラシーンはトータルで7万2793台が生産(出典)されたようなのですが、量産車として考えるとあまり多いとも言えない数字です。
もともと馬鹿売れは期待されていなかったため、生産はパオやフィガロの製造、また180SXを生産したことでも有名な高田工業さんが担当されていました。元が特装車の製造メーカーさんなので、少量生産や細かな工程が必要な車などを、専門で生産されていたんですね。ラシーンはまさにそんな車でした。
ただ実際のところ、94年から2000年までの6年間コンスタントに売れ続けていたみたいです。想定を超える注文が入った時期もあり、ライン増強や交替勤務で対応されたとのこと。そんな状況なのに生産終了したのは、2000年に大きく変更になった衝突安全基準に対応できなくなったから。

ラシーンってヘッドライトはガラス製ですからね。黄色く焼けなくてとてもいいですよ。歩行者への安全面は考えられていませんが(汗
で、この車めちゃめちゃ仕様が複雑なんです。
前期型と後期型で大きく分けられるんですが、ラシーン専門店でかなり有名な大阪の「チャチャイモトクロージングさん」がとても見やすい表を作られているので、それを引用させていただきまして解説していきたいと思います。
前期型

全車両1500ccです。トランスミッションは5MTか4AT。TYPEⅠ~Ⅲまでが基本仕様として存在しています。
TYPEⅠは背面タイヤもルーフレールもない仕様。すっぴんのバンみたいなグレードです。ここから数字が増えていく毎に、背面タイヤやサンルーフ、カンガルーバーなどが追加されていきます。
限定モデルの装備が画像を参照。特徴としては専用カラーが設定されていることです。
後期型

フロントグリルが縦筋になりました。
またABS,エアバッグなどの安全装備が標準となり、細かな便利装備もアップグレードされています。
大きな変化点は、一部のグレードで1800cc(SR18)が選べるようになったことです。
グレード構成が更に複雑になり、ホワイトメーターやヘリンボーンモケットのシート、革巻きハンドルにアルミホイールなど、様々な差別化要素が出てきています。
また販売終了までの2年間だけになりますが、丸目4灯のラシーンフォルザが2000ccエンジン(SR20)を搭載して発売されています。オーバーフェンダーを備えたスポーティーグレードになります。
車両選びが複雑
ここまで複雑な仕様設定になると、中古で「こういうラシーンがほしい!」となった場合に妥協せざるを得ない組み合わせが出てきます。
例えばカラーリング。全体的にアクティブな前期型と、シックな後期型。限定色もたくさんあります。黒いラシーンに乗りたい!と思ったら、前期型のTYPE Fしか選択肢がありません(オールペンを別にすれば)
またサンルーフを選べるのは前期型のみです。逆に1800ccを選べるのは後期型のみ。トランスミッションも後期型になるとATのみのグレードが出てきます。
こだわりの装備やカラーの組み合わせを選ぼうと思ったら、意外と難儀する。しかもその要素一つ一つが、ラシーンのキャラクターを大きく左右するものなので、なかなか妥協するのも難しいだろうなぁと思います。

写真は同型車両
まぁ自分は出てきたサンドベージュの後期型1500cc・背面タイヤ付をポンと買ってしまったのですが、特に後悔はしていません。
あえて言うならば、サンルーフは有ると面白かったかもなぁとは感じています(量産車最大級の開口面積らしい)
走行性能

GA15Eという、日産の商用バン(ADバン)にも使われていた非常に頑丈なエンジンを搭載しております。
ヘッドカバーのガスケットからオイルが漏れやすいという持病があったりするものの、基本的にとても頑丈なエンジンです。定期的にオイル交換していれば故障の可能性は低いと思います。
ただパワー感とか官能性はさほど特筆すべき物はないです。しいて言えば遅い。100馬力程度のエンジンで、ぶん回したらそれなりに走りますが結構ウルサイ。燃焼効率も悪くATも制御が古いためリッター9km程度の燃費です。
重たいステアリングと相まって、あぁ古い車転がしているなぁというノスタルジックな感覚に浸ることができます。

また後期型の1800ccとフォルザにはSR系のエンジンが搭載されているため、エンジンチューンはそちらのほうが盛んなようです。
リアデフはシルビアのものと共通ですので、いろいろと改造ができるとのこと。2Lターボにした場合はエクストレイルターボの純正マフラーなどを取り付けることができたりとか、いろいろトライされている様子がみんカラ等に掲載されています。

このラシーン、フルタイム四駆を採用して多少リフトアップされています。
ですが基本はサニー/パルサーですので、あまり無茶な路面を走ると車体にダメージが行きます。本格的な不整地走行能力は付与されていません。
登場した1994年当時は、「RV≒ガチ能力を持つクロスカントリー」といった見方をしていた人が多く、シティーユースのSUV・クロスオーバーという概念があまり認知されていなかった時代です。そのためラシーンはなんちゃってクロカンの汚名を着させられて、一部の方からやたらと毛嫌いされたという歴史を持ちます。
だた見方を変えるとこの車、非常によく練られて作られているんですね。
考え抜かれた道具感
この車の土台になったのは、徹底して「車を道具として考えてみよう」という目線でした。
バブル景気が崩壊しつつある90年代初頭。飽食の時代の次を見据えた時に、「物の本質を見極めることが大事なるのではないか」とデザイナーさん達が考えました。そこで車は快適に暮らす道具として定義し、そのベンチマークにシトロエン・2CV、またはルノー・4を設定。これらの車がなぜヒットしたのか、そして現代にリファインしたらどうなるのかを洗い出しました。そして出てきたのがラシーンなんです。

基本的にソリッドでボクシー。少しリフトアップしているのは、乗り降りをしやすくし日常の小さな段差などを気にしなくて良くするため。
荷室ドアが上下に分割するのは、小さな荷物は上半分で出し入れできるようにする利便性のため。またリアオーバーハングが短いのも、荷室のサイズを必要最低限にして、日常での取り回しを優先したデザインだそうです(クロカンも同じ考え方)。
かつベースのサニー・パルサーの造形を生かしてコスト要求も満たす。ルーフレールや背面タイヤ(実はテンパータイヤ)を設置したのは、積極的に主張しない車が故に「これどんな車なの?」というユーザーの違和感を払拭するために、「販売上のデザイン的な折衷案」として取り付けられたものです。
とまぁこういうウンチクを並べていくと、とてもおもしろく練られた設計なのだなと感心してしまいます。
この辺のお話は、下記のエンスーCARガイドにとても丁寧に、しかも面白く記載されていますので、ぜひ手にとっていただきたいと思います。
ラシーンのデザインルーツを巡る資料、中古車購入時のバイヤーズガイドとしても非常に役立つこと請け合いです。
Twitterでの声
1.5L乗りましたが、踏まないと全然走らないです。今の軽のほうが遥かに走ります。
— 偏見で車を語るbot (@henken_car) 2017年7月13日
学校の近くに放置されてた車これだったのか https://t.co/c2bgIMeSYK
— よっぴ〜@Ninja系男子 (@Ninja_spring135) 2018年3月30日
タイプ1ってグレードが、背面タイヤもルーフレールも何もついてないので、ある意味商用車臭がします
— 偏見で車を語るbot (@henken_car) 2017年10月12日
このデザインのまま今の技術で再開発してくれたら絶対買っちゃいます。
— JP (@pei1021) 2017年10月12日
中身これと一緒やからしゃあないかぁ(´Д`)ハァ… pic.twitter.com/qmqXSMvi4e
— なべ@フィット乗り (@nabefitHybrid) 2017年7月13日
まとめ

この車の後継は、ジュークであるともデュアリスであるとも言われています。
ただこの独特のヌケ感というか、普段遣いでの洗練された道具のような存在感を放つ車は、殆ど無いような気がしています。
他社になりますが、ダイハツさんのミラトコット。これはラシーンの影響をとても感じます。

その前身のミラココアも全体のフォルムがラシーンのデフォルメのようにも見えたりますね。
ラシーンが欲しくなった人へ

基本的には頑丈な車です。走行距離が10万キロを超えていたとしても、欲しかったら手を出していい類の車だと思います。
機構系部品はまだまだ十分出るし、基本的に部品は安いです。街の整備工場でも対応できる構造の単純さも魅力。前オーナーがよほどメンテをサボっていたり、変な改造などをしていない限り、普通に街乗りや遠出を楽しめるでしょう。
一般的な消耗品に、エンジンマウントやゴム、劣化の進んだセンサー・補機類などを一通り交換しても、追加の整備料金は30万円くらいあれば十分じゃないかなと思います。仮に40万円くらいの車両を買って、相当しっかり整備してもらっても70~80万円位出せば、相当に状態の良い車両を乗り出すことが出来ると思います。
ボディが腐っていない事が大事になるので、錆などは注意してください。

所有欲は思う存分満たせます。これは間違いないです。なまじ走っている車ではないので、特別な感覚を味わうことができます。
正直そろそろ次の車を考えているところなのですが、この車以上のデザイン性、あとネタ的な部分含めた面白さを持つ車を探すのに、とても苦労しています。かみさんも同意見なので、どの車にしようか結構真面目に悩んでいます。
いろいろ考えるけどラシーンに乗ると、「これっていい車だよね」という気持ちになってしまうんです。そんな不思議な車だと思います。
主要諸元(1.5 タイプS 4WD)
基本性能
型式 | E-RFNB14 | 最小回転半径 | 5.2m |
---|---|---|---|
駆動方式 | 4WD | 全長×全幅×全高 | 4.12m×1.7m×1.52m |
ドア数 | 5 | ホイールベース | 2.43m |
ミッション | 4AT | 前トレッド/後トレッド | 1.44m/1.42m |
AI-SHIFT | – | 室内(全長×全幅×全高) | 1.81m×1.42m×1.18m |
4WS | – | 車両重量 | 1220kg |
シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg |
乗車定員 | 5名 | 車両総重量 | 1495kg |
ミッション位置 | フロア | 最低地上高 | 0.17m |
マニュアルモード | – | ||
標準色 |
ホワイト、ダークブルー、サンドベージュ、シーダーグリーン、ライトブルー |
||
オプション色 |
– |
||
掲載コメント |
– |
エンジン
エンジン型式 | GA15DE | 環境対策エンジン | – |
---|---|---|---|
種類 | 直列4気筒DOHC | 使用燃料 | レギュラー |
過給器 | – | 燃料タンク容量 | 50リットル |
可変気筒装置 | – | 燃費(10.15モード) | 15.2km/L |
総排気量 | 1497cc | 燃費(WLTCモード) | – |
燃費基準達成 | – | ||
最高出力 | 105ps | 最大トルク/回転数 kg・m/rpm |
13.8/4000 |
足回り
ステアリング | 位置 | 右 |
---|---|---|
ステアリングギア方式 | パワーアシスト付ラック&ピニオン式 | |
パワーステアリング | ◯ | |
VGS/VGRS | – | |
サスペンション形式 | 前 | ストラット式 |
後 | ストラット式 | |
高性能サスペンション |
– |
|
タイヤサイズ | 前 |
185/65R14 |
後 |
185/65R14 |
|
ブレーキ形式 | 前 |
Vディスク式 |
後 |
ディスク式 |
主要諸元は、カーセンサー様から引用させていただきました
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